サブドミナントマイナーの正体

旧来の音楽理論で言われていることで「え?なんで?」がすっきりしないことを7CM理論で紐解いていく手記である。

-M.Bourbaki-

注:本カテゴリーは、新しい公理系の音楽理論『7CM』の理論記事です。

subdominant minor is

サブドミナントマイナーと呼ばれるあの切ないコード、その正体について

旧来概念で言われること

定義(?)

Ⅳm(例:Fm in C)はサブドミナントマイナーと呼ぶ(?)

サブドミナントのⅣがマイナーだからサブドミナントマイナー、ということだろう。分かりやすい。

使い方

試しにF→G→CをF→Fm→Cにしたものを聴き比べてみよう。

sound:F→G→C
sound:F→Fm→C

なるほど、なんだか明るい陰った感じの切なさだ。

疑問符?

それだけじゃない

Ⅳm、すなわちin CのFm以外にもサブドミナントマイナーと呼ぶことがあるようだ。そもそもサブドミナントマイナーはどのように語られてるか、よく聞くものを羅列してみるとこうである。

  1. Ⅳmはサブドミナントマイナーである
  2. サブドミナントマイナートニックドミナントサブドミナントとは別の機能である
  3. Ⅱm♭5はサブドミナントマイナーである
  4. ♭Ⅵはサブドミナントマイナーである
  5. Ⅴ7(♭9)はドミナントだがサブドミナントマイナーでもある
  6. ♭Ⅶ7はサブドミナントマイナーである
  7. 一方で♭Ⅶ7をドミナントと呼ぶこともある

サブドミナントであるⅣをマイナーにしたからサブドミナントマイナー、の定義だとそれは1までしか定義されない。3はサブドミナント減5度だし、4,5,6…となると疑問符である。

実際に聴いてよう。ただのⅤ、1.Ⅳm、3.Ⅱm♭5、4.♭Ⅵ、5.Ⅴ7(♭9)、6.♭Ⅶ7の順に並べる

sound:F→G→C
sound:F→Fm→C
sound:F→Dm♭5→C
sound:F→A♭→C
sound:F→G7(♭9)→C
sound:F→B♭7→C

ちまたで言われるサブドミナントマイナーの定義は明確なのだろうか。やや曖昧に感じるが、色々聞いた感じでは♭ⅵの音を含むコードをサブドミナントマイナーと呼ぶということであれば一貫していて筋が通りそうだ(★1)。一旦そう考えよう。

定義はまだ不明確

しかし2の主張を考えると、5,6,7はおかしな事になっている。Ⅴ7(♭9)をドミナントサブドミナントマイナーハイブリッドだとすると、そもそも「別機能」とするのは正しかったのだろうか。

6,7に至っては、

  • コードトーンに♭ⅵがあるのでサブドミナントマイナー
  • コード型がセブンスコードなのでドミナント

としたい意図が垣間見れる。これは…流派争いの火種にならないか不安である…。これは音楽状態を全てコードを機能(T、D、S、SDm…)という単位だけで切り取るとうまくいかない例であり(このコードはこれ!と明瞭に言えない状態)、うまくいかない原因を定義に立ち返ることなく無理やり突き進めたしわ寄せにも見える。

では原理視点・7CM理論ではどうなるのかを見ていこう。

7CM理論での論理

機能ではなく7CM

まずサブドミナントマイナーと呼ばれてるものが何なのか、解像度を上げて解釈すると

  • 旧来サブドミナントマイナーと呼ばれるものが指してるのは雰囲気

である。先の★1のとおり、♭ⅵの持つ雰囲気を指して呼んでるのではないか、ということになる。

そうなるとこれは7CM理論では機能ではなく、雰囲気を司るもの=7CMそのものである。記述は単純である。

  • サブドミナントマイナーはメジャー調性から♭ⅵへ剥離した7CMである
    • =主彩度(6th)が減した7CM

例えばHM、MM、WMやAeoがサブドミナントマイナーの正体である。

主彩度含む光彩の詳細については[理論]光彩、または[概論]光彩の概要、を参照されたい。

各7CMの詳細については[理論]HM(ハーモニックメジャー)[理論]MM(メロディックメジャー)、[理論]WM(今後記載)、[理論]Aeo(今後記載)または[概論]第16回-SDmの出身(HMについて記載)[概論]第17回-M系代表型(MMについて記載)を参照されたい。

しわ寄せの解消

改めて旧来概念を見てみよう。サブドミナントマイナーを7CMとして書き直してみる。HMでもMMでもAeoでも良いのでいずれかで書き直してみると次のようになる。

  1. ⅣmはHM上のものである
  2. HMという概念トニックドミナントサブドミナントとは別の次元の概念(=7CM)である
  3. Ⅱm♭5はHM上のものである
  4. ♭ⅥはAeo上のものである
  5. Ⅴ7(♭9)はHM上の ドミナントである
  6. ♭Ⅶ7はMM上の…(次行に続く)
  7. (続)ドミナント(※)である
    ※7CM理論では正確にはL機能だが、TDSシステム上では実質的にD扱いとして差し支えない

どうだろうか。7CM理論では、L1-L2層(下図の大地)が7CM(世界を彩る雰囲気)で、和音はその上のL3層(下図の地上)で機能を持つ。それぞれ別の層の概念である。

音楽世界の構造
figure:music world structure(音楽世界の構造)

トニックドミナントサブドミナントはL3層の機能の概念であり、サブドミナントマイナーと呼ばれる雰囲気はL1-L2層の話なので、同時に成立し、なんら不都合は生じない。

そして実際にサブドミナントマイナーらしさはその♭ⅵの持つ雰囲気にあり、上図のL2層=7CMの話である。具体的なコードたちはその雰囲気の土台の上でトニックドミナントサブドミナント機能の形を持った和音たち、と見れば聴感とも合致する自然な論理となる。

結論

旧来概念のサブドミナントマイナーは、トニックドミナントサブドミナントと並列となる機能ではなく、♭ⅵを持つ7CMを想起させるコードのことである。

実質的にはHM、MM、WM、Aeoなど♭ⅵを持つ7CMのことを指している。

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  • 筆者
    月屑
新公理系の音楽理論『7 Color Materials』提唱者。本音楽理論と、その世界観を表現した物語小説『7CM』およびその解説を本サイトにて執筆・公開中。 月屑という別名義でも『Music STanDard In/Out』というサイトにて、従来の音楽理論寄りの『キミの音楽理論』や、楽曲の耳コピ分析等を執筆。
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