7CM理論-進行保留
ここから先は、新しい理論体系『7 Color Materials』の内容となります。従来の音楽理論等や、聴いてる人の感情から逸脱するような表現や整理が生じる可能性がある点、ご理解の上読み進んでいただきますようお願いします。
記事の構成、内容、公開スコープは予告なく変更することがあります。
停滞する接続の中にも重要な性質がある。進行を期待する保留という性質である。
引力保留
前回までで、接続には進行と停滞があるということを記述した。かたや引力(T引力、D引力、L引力)どおりに乗る接続、かたや引力に乗らない接続である。
その引力に乗らない接続である停滞にも重要な性質がある。それがこれから記述する進行保留である。※引力に乗る接続である進行にも発生する公理である。
引力残り香公理
引力から派生する公理を記載する。
ある小調性で生じていた引力は、別の小調性に接続したあとも減衰しつつ働く
異なる小調性へ接続後も残る引力のことを、引力の残り香と呼ぶ
これは「さっきまでの小調性の期待(行きたい先=引力)をまだ少し引きずっている」状態である。光彩編でいう「音の残り香(未記載)」に相当する引力の概念である。
少し、というのはやはり「今いる小調性」の実音影響を多分に受けるから、である。
残り香の可視化イメージ
例で見てみよう。例えばAm in CNMの引力を考えてみる。前段として、まずG in CNMの引力は
- 引力①(T引力):GからCへ働く
- 引力②(D引力):GからCへ働く
- 引力③(L引力):GからF、Amへ働く
である。可視化すると次の矢印のようなイメージになる。
次に、Am単独での3引力は次の矢印のようになる。
- 引力①(T引力):AmからCへ働く
- 引力②(D引力):AmからDmへ働く
- 引力③(L引力):AmからG、Bm♭5(※G/BやB♭等でもよい)へ働く
ここまでは引力公理の話である。今回の公理はGからAmに接続した時、Am時点においてもGの引力を薄ら引き継ぐというものである。イメージとしてはGの後Amに接続した際にGの引力が下図のぼやけた矢印のようになり、Amから出る矢印と合わせて考えるとCを指す矢印が多い(=Cへ期待が高まった)状態となる。
この公理は2つの性質を示している。
- 進行している接続(X→Z)の間に別の小調性(Y)が挟まっても、まとまった同じような流れになりえることがある(XーYーZ≒X→Z)
- 停滞となっている接続(YーZ)も、その前の小調性(X)が最後の小調性(Z)に進行する小調性(X→Z関係)の場合、流れが生まれることがある(YーZをXーYーZにすることで、YーZが進行感を持つようになりえる)
今回の例で言えば、それぞれ以下となる。
- G⇒Cの進行にAmを挟んでG→AmーCとしても、進行感は少し薄らぐがまとまった同じような流れになりえる
- AmーCだけの接続は停滞で唐突感・分断感があるが、Gから開始してのG→AmーCだと一連の流れが生まれる
実際に比較音源を聴いてその存在を確認してみる。
進行の期待
進行とは引力の期待通りに小調性同士を接続することだった。例えばGコードはCコードへのD引力期待を持っており、G⇒Cと引力の通りに接続すれば進行感を得る、というものだった。
引力の残り香とは、言い換えれば「あっちへ進行したい…でも次に別のところに進んじゃった。まだあっちに進行してほしい気持ちはあるんだよね…」という進行自体の諦めきれない期待の話である。
期待有無の比較例
以下を比べて、期待の有無を確認してみる。①が進行接続の基本形で、②がそれを停滞接続させるケース、③は②と後半は同じ接続だが、接続元の小調性が異なるケース(GからではなくFから接続)である。
- ①GーG7⇒C
- ②G→AmーC
- ③FーAmーC
②と③で後半のAmーC部分は同じである。ここの接続に関する進行感を比べてほしい。
どうだろうか。②と③どちらの方がまとまった一連の進行のように感じられるか。どちらもAmーCが停滞接続なのですんなりとした進行感はないかもしれない。
②G→AmーCの方はAmーCが停滞接続であるから分断してるとはいえ、まだ少しまとまって進む感が感じられるものの、③FーAmーCの方はAmとCの間で分断してしまった感・停滞感を感じやすいのではないだろうか。
さて、Am時点を可視化イメージで見てみる。②G→AmーCの例では、Amを聴いている時点においてもGからCへのD引力の残り香が生じている。Am状態なので、Gにいるときほどの引力はないが、ほんのり期待を背負っている状態である。
一方で、③のF→AmーCの例ではCへの引力残り香が生じていない(T引力は②と③で同等であるからこの比較においては無視する)。このためCへの進行に関する期待感は②ほど生まれない。②と③ではCを指してる引力矢印の本数が異なり引力の程度が異なる。
この比較により、
- GからAmへ接続するか
- FからAmへ接続するか
によってその先のAmーCの進行感に差が出ることがわかる。
引力保留
ここで定義をする。
ある引力を満たさない接続のことを、引力を保留すると呼び、そのときの引力を保留された引力と呼ぶ
進行してほしいという心の期待(引力解消)をお預けすることである。
例に見たように、GコードからAmに接続したときは、Gコードの(Cへの)D引力を保留した、と表現する。
ただし上記の例は、GコードのAmへのL引力自体は解消している。つまり保留する=進行していないであるとは限らないという点に注意。何かしらの引力を解消していても、他の引力を保留していることもある。あくまで引力視点である。
進行保留
さて、いよいよ音楽的に非常な有用な本題に入る。引力の残り香公理と引力保留公理から次の心理状態が生じる。
保留された引力と現状の引力に共通の引力先を持つとき、そこへ接続すると一連の進行感を得る
1つ前の小調性の保留引力と、現在の小調性の直接的引力の合わせ技である。言ってみればこの定理は「保留した引力を次の小調性が一緒に合わせて解消する」ときに「一連の進行感」を得られる、という定理である。例を見てみよう。
進行保留の例
Dm→CのL引力をGで保留する(Dm⇒G⇒C)
Dm→CのL引力を、Gを挟んで保留する場合の例を見てみる。
Dm⇒G⇒C
まず、Dm時点での引力は以下可視化イメージの矢印のとおりである。便宜上、最下段のCの隣にあるDを一番上に持ってきている。
次に、G単独での引力イメージは次のとおりである。
DmからGに接続するので、このG時点の引力に1つ前の小調性=Dm時点の引力の残り香をぼやっと重ねると次のようになる。
Cからすると、G⇒Cの強力なドミナントモーション(T引力+D引力)に、Dm時点の残り香引力も増しており、Dm~G~Cまでの一連の進行感を得る。進行力はぐっと高まる。(本ケースは所謂トゥーファイブモーションである。)
G→AmのL引力をEmで保留する(GーEm⇒Am)
続いては、G→Am in ANmのL引力をEmを挟むことで保留するケースである。G時点の引力は in ANmでは以下のイメージとなる。
また、Emについての引力は次のイメージとなる。
ここで、GからEmに接続することで引きずられるGの引力をふわっと重ねると次のようになる。
Em⇒Amの接続により、Emの持つT引力、D引力とGの時に抱いていたL引力の残り香を合わせて解消する流れである。これにより、G~Em~Amの一連の進行感を得る。Gで生じたCへのL引力をEmが代わりに解消してくれた状態である。
その他
図示はしないが、以下なども保留のケースであり、
- ①保留して残り香引力を解消する
- ②保留するが残り香引力を解消しない
というケースである。
G⇒Cを保留する2ケースを比較する。
①GーDm→C
②GーFーC
①はG⇒CのD引力(保留)とDm→CのL引力、T引力(直接)がCに向いている。
②はD引力(保留)とT引力(直接)のみであり、①の方が②よりも一連の進行感があるように感じられる。
まとめ
今回の手記をまとめると以下のようになる
- [引力残り香公理]ある小調性で生じていた引力は、別の小調性に接続したあとも減衰しつつ働く
- [定義:引力保留]引力を満たさない接続のことを、引力を保留すると呼ぶ
- [進行保留定理]保留された引力と現状の引力に共通の引力先を持つとき、そこへ接続すると一連の進行感を得る
この保留と解消のバリエーションは多岐に渡るように見えるが、実は分類すると多いものではなく、音楽的に有用な識別ができるようになる。次回は、この一連の進行感についての類別をしていく。
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