[9mm]Identical.

2020年01月10日

途切れないコンティニュアス日常ワールド

カチカチッ

ボクにはわかる。私がムジカを変えてくれた。今ボクは明るい世界、NMの7CMにいる。周りの人はどうだ、気づいているか。

おばちゃん、遅刻しないでよね。

はぁ、そうだね…。ん?そうだよね、よし!ちゃんと計画的に行くよ。え~っと…

ムー君、ちょっと寄り道していかない?

うん、丘を越えて行こう!

そんなことはどうでもいい、そう思えるくらいに心と前に出る足が軽やかになる。さっきまでの鬱蒼とした空気がこの街にはない。

私はただそれを見ている。

ボクまだそれを見ていない。ボクらの世界が切替わる断面を。

日常ムジカ

途切れていない連続している

違和感がない違和感

ボクも察するように、私はボタンを押してムジカを変えた。明るいムジカは予想の通り得られた。しかしそれと同時に私は多大な違和感に飲み込まれ、顎が右手を緊急招集する。

おかしい

さっきの検証では、7CMをすべて一つ隣に配置換えをし、ボタンも一つ隣の窪み裏のものを押下した。その結果、ムジカは一瞬の切り替えのような断面世界を見せつけられたのちに、同じ世界へ収まった。

なぜ今回はそれがない?

初めて椅子のpボタンを押したとき、ムジカの中はどうだったのか。ボクの記憶を手繰り寄せる。

ない、どこにもない、出てこない。

世界の切替え断面の記憶がない。これは思い出せないだけなのか、果たして体験としてなかったのか。しかし椅子にボタンが配置されるくらいである。レールのボタンとは異なって特別なものなのだろう、切替わりがないという事象でも問題はない。ここまではまだ私の想像の範疇である。

解せない

しかし今回私が押したのは椅子のpボタンではない。レールのボタンを押したのである。窪みを三つ分左に移動した場所で。

聖なる理ムジカセオリー

そんなことはないのです

はっきりと聞き取れた。誰かがいる。いや、いない。反響しない声と目の前の光景がリンクしない。目の前にいたとしてこの声は物理学的に受け入れることができない。

世界は切替わっているのです

The World is Over…

混乱し始める。背中に分厚い壁が欲しい。心に直接語り掛けられる声に必死に抵抗する。力む肩、呼吸のBPM上昇が止まらない。唾をのむ音で耳栓をしようにも意識は声の方へ寄せられる。

ダンッ

転げ落ちる。いや、落ちたのではない。椅子がそこには既にない。ムジカが終焉を迎えたのだ。

聖書にはこうあります

お前の番だ

止まない声、私はもはや思考が止まり、ただただ白くて広い宇宙に意識が投げ出される。

メジャーなムジカとマイナーなムジカは別物

たとえ同じコダーに照らされていたとしても

好きにするがいい

コダーの魔法は異なるものとなる、と

コダー…ヒカリだったか妖精だったか。ボクからすると馴染みの存在で真新しいものではなかったが、私はまだその正体も性質も何も知らない。しかしボクはどう感じていた?思い出せ、真実は何だ、思い出せ…。

い、いま、、ムジカは終焉を迎え、て、

声が空気に滲んでしまう。このまま溺れてしまう、肩で息継ぎを行う。

ボクが、ど、どこにもいないから、確認することはできない。

声が震えているのがわかる。一度の深呼吸を挟み、腹筋に力を入れて絞り出す。

た、ただ私が覚えている限り、せ、世界は切替わらなかったし、ムジカは変わらなかった、んだよ。そ、そしてNMの中でも、Nmの中でも、黄色いコダーに、照らされたとき、ボクは、足を止めたんだ。

反響するいつもより細く上ずった声。数十ミリ秒程度。私が部屋に存在している、ということが認知される。空気の過疎過密で伝わる波である以上、私は外からも私の声を多少なりとも認識できる。自然界の理である。しかし、外からは得られない反響しない声と存在…

だ、だれですか?

解消しなければならないメインテーマをようやく掲げる。しかしお腹に力を入れて吐き出したそのボードに書かれている文字は細すぎて、そして持つ手が震えすぎていて相手に認識されていないかもしれない。やせ細って部屋の外へと吸い込まれてしまう声。

…であればどうなるのでしょう

センター遷移

穏やかなまま変わらない口調。しかし微かに動揺のような揺らぎを感じる。質問の意図が正しく掌握できないが、決して問い詰められているわけではなく、裏には怒りがあるわけでもなさそうだ。単純な興味、と捉えアイデア脳を猛回転の末回答をねじり出す。

同じ世界だと考えたい。私たちはいつだって喜怒哀楽を連続的に変化させて生きている。日常の目的だって気がつけば変わることだってある。ただそれだけ、ただそれだけのいたって普通な日常だと。

別の世界ではないというのですか

食い気味にかぶさる声。私は何かに背中を押されるように声を吐き出し応じる。

そうだ、同じ世界だ。行先は違うかもしれない、だがそれは世界が変わったのではなく目的が連続的に変わった日常と考える

何を言っているかわからなくなりつつあった。しかし、言わねば何も変わらない、今がその時であるという確固たる何かの力が働いていた。

…ならば私はあなたを見届けましょう

ただただ私だけの声が反響する部屋で、私は一つの覚悟を吐き出した。

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シリーズ [0cm]the worlds.
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  • 筆者
    月屑
新公理系の音楽理論『7 Color Materials』提唱者。本音楽理論と、その世界観を表現した物語小説『7CM』およびその解説を本サイトにて執筆・公開中。 月屑という別名義でも『Music STanDard In/Out』というサイトにて、従来の音楽理論寄りの『キミの音楽理論』や、楽曲の耳コピ分析等を執筆。
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