[6mm]Parallel.

2019年12月30日

視点

カチカチッ

ワンプッシュに二回の音。こだまなのか。だとすると部屋の大きさには見合わない遅延。それ以外に変わったことは起きていない気がする。ゆっくりと目をあける。

…どこだ!?

いや、それは無意味な質問である。私はここを知っている。さっきと変わらず同じ部屋にいる。そうではない、私は今どこに座っているのか、それが問題なのである。

右の窓から私の頬を撫でる風。私が座っていた場所に私は居ない。椅子ごと移動している。ジオラマ基準で言うと、先程の場所から90度右側にいて、そこからジオラマを眺めている形だ。何の刺激も動いた形跡も感じなかった。ただただ目を開けた時に景色だけが移動していた。

椅子の移動…

私はもう一度ボタンを押す欲求に包まれる。pボタンを…

明るい…?

ボタンの色が明るく輝いている。天然色のような自然な明るさである。

目を開けて見つめてやる

思考が八割方停止する中スイッチを押す。

カチカチッ

ムジカ in CNM

視覚を奪われたのか、はたまた私の目は上映スクリーンと化したのか。目の前の情景がクロスフェードする。現実とは思えない光景。先程の位置の景色を見せられている。

私もまた誰かのジオラマの中にいるのか…

再度ボタンを探す。暗く輝くボタンを。

カチカチッ

90度回転した景色。ふとジオラマの異変に気がつく。

え、どうした住人…何があった!?

影の世界

そう、楽しさはいつか終わる

ボクは悟っている。楽しい時もそりゃあある。でもずっとそうあるわけじゃない。いつか悲しいことだって訪れるんだ。

ハグしたばかりのムジカ好きお兄さんに会釈をし、道端に伸びる影をゆっくり目で追い歩みを進める。座り込む人と衝突する影。

行ってしまうのかい

顔を挙げることなく投げかけられる声。

うん、みんなも向かうんでしょ。

目を合わせることなく声の元へ返す声。

こうなることもあるさ。こうなることも。

誰へ宛てたわけでもない声。

向かいましょう。

抗うことなく背中を押す声。ただただ暗いムードに包まれている。僕にはよくわからない。変化の予兆も何も感じなかった。ただいつの間にか寂しさに包まれている。

私が押したボタンのせい?

負の感情というのだろうか。ネガティブが次から次へと押し寄せてくる感情の波。ムジカにいても感じること以外のことは何も分からない。僕を含めて誰も俯瞰できる人物はいない。やはり私だ、コンポスだ。ジオラマを観察しよう。

もう、ちょっと止まってもいいかい…

口をすり抜けた言葉は、地面に座り込むボクの上を照らし続けるコダーに届いただろうか。薄暗く赤色に僕らを染めていたコダーは、言葉より早く黒い黄色へと変化しつつあった。

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シリーズ [0cm]the worlds.
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  • 筆者
    月屑
新公理系の音楽理論『7 Color Materials』提唱者。本音楽理論と、その世界観を表現した物語小説『7CM』およびその解説を本サイトにて執筆・公開中。 月屑という別名義でも『Music STanDard In/Out』というサイトにて、従来の音楽理論寄りの『キミの音楽理論』や、楽曲の耳コピ分析等を執筆。
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