[5mm]Major.
自然なヒカリ
Natural Major
自然な…メジャー?メジャーってなんだ?新しい街の名前だろうか。
旗に書かれていた文字。なんとも名詞的ではない名称である。
通りゆく人に話しかけてみよう。
ねぇ、ムジカは街の名前が変わることはよくあるの?
何言ってんだ。名前なんて他者と類別するために付けるもの。ここムジカにとって他者なんてあるかい?
それもそうか。
とは言ってもムジカって名前は気に入ってるんだけどね。いい感じじゃん?
俺も最高に好きだぜ~!ハッハー!
なんだかこっちまで楽しく朗らかになる陽気さだ。いや、違う。本来の話はそこじゃない。Natural Majorとはムジカの改名ではなさそうだ。だとすると…
キースケール
ねぇ、あの国旗のようなものは何?
国旗?どこだい?
あの…
天高い雲の上を指さし口を閉ざす。見えない。凄い勢いで上昇した旗は、天高く宇宙の果てへと消え行ったのだろうか。ここからは旗らしき存在の確認が困難に見える。
…キースケール
え?
あ…、キースケールじゃないかしら?聖書に書いてない?天高く旗が、ってお話が書いてあったと思うわ。
自分の口から単語を切り離すかのように口早に説明をする少女。彼女に促され『猫でもわかる聖書のすべて』をめくる。
キースケール【名詞】
この世界はいくつかのヒカリにより作られた。キースケールとは、そのヒカリの種類と組合せを示すものである。キースケールはこの世界およびすべての民の感情を司る聖なる骨格であり、一説によるとこの世界の総てを司る神の視点には、キースケールを把握するための聖なる旗が映っていると言われる。
『猫でもわかる聖書のすべて』
頭がパンクしそうだ…。
みんな陽気でしょ?今はそんな世界なのかもね♪
なんだかよく分からないけど、考えたって仕方がない。楽しいからそれでいいじゃないかって気分に包まれる。
それでいい…
…のか?
私は椅子から背を離す。旗はムジカの状態[キースケール]を神に知らせるものであった。そしてこれは恐らく7CMに関係している。あのマテリアの配置組合せでムジカの状況は一変し、そしてそれを表すのが旗であるからである。
そして今の状況、村人全てが優しく明るい気持ちでいる。なんともポジティブなエネルギーが湧いてくるような。それでいて勝利を収めた時のような強い興奮はない。穏やかにそして自然に明るく陽気である。
パラレルスイッチ
NM、ナチュラルメジャーか。
ナチュラルという単語とこの自然な雰囲気を脳内でリンクさせ背もたれに寄りかかる。
ムジカはお前のセカイだ
手の甲に触れる感覚。pと書かれた薄暗いボタン。光を吸い込んでいるのだろうか。好奇心との葛藤が始まる。
ダメ
このままでいてもムジカが陽気のまま終焉を迎えるだけ。押すか?私は押したい。ボクは…?
♪~♪~楽しいね、ワクワクしているよ。いつもこの陽気なの?
…うん…
今聞いても無駄であろう。私は目をつぶり、好奇心の代わりを担う親指がそれを押下した。